
1991年公開の映画『羊たちの沈黙(The Silence of the Lambs)』は、ジョナサン・デミ監督によるサイコスリラー。主演はジョディ・フォスターとアンソニー・ホプキンス。
若きFBI訓練生クラリスと、収監中の天才精神科医で猟奇殺人犯ハンニバル・レクター博士との心理戦を描いた作品で、公開当時アカデミー賞主要5部門を制覇しました。
この映画は“言葉の怖さ”を強烈に実感できる作品であり、英語学習の観点からも面白い一面があります。
シンプルなフレーズが、話し方や文脈によって恐怖や緊張を生み出す――英語を学ぶうえで「イントネーションや言葉の選び方がどれほど重要か」を体感できるのです。
“I ate his liver with some fava beans and a nice Chianti.”
映画史に残る不気味なセリフがこちら。
“I ate his liver with some fava beans and a nice Chianti.”
(彼の肝臓をそら豆と上等なキャンティワインで食べたんだ。)
ハンニバル・レクター博士が、淡々と微笑みながら語るこの一言は、観客に強烈な戦慄を与えました。セリフ自体は淡々としているのに、そのギャップが恐怖を増幅させています。
日本語字幕では「肝臓をそら豆とキャンティワインで食べた」と比較的直訳に近く訳されています。
しかし注目したいのは、原文のリズム感。
・with some fava beans and a nice Chianti と語尾をゆっくり伸ばしながら言うことで、まるで食事を楽しむような調子になり、不気味さが増しています。
字幕では伝わりにくい“言い方の気味悪さ”こそ、このセリフの真骨頂なのです。
英語表現としてのワンポイントアドバイス
・I ate … with …
とてもシンプルな文型ですが、ここでは「日常的な食事の描写」と「猟奇的な内容」が組み合わさることで強烈なインパクトを生んでいます。
・a nice Chianti
nice は「素敵な」「上等な」といった口語的な褒め言葉。ワインを a nice Chianti と表現するのは、ネイティブらしい自然な言い回しです。日常では a nice coffee(美味しいコーヒー)や a nice dinner(素敵な夕食)などに応用できます。
*学習者にとってのポイントは、「シンプルな文も、言い方や文脈次第で全く違う印象を与える」ということです。
まとめ
『羊たちの沈黙』は、派手なアクションではなく、心理的な駆け引きや会話で観客を惹き込む作品です。
英語学習者にとっては 上級者向け。
・レクター博士のセリフは発音が独特で聞き取りにくい
・精神分析や犯罪心理に関する専門的な単語も多い
・一方でクラリスとのやりとりは比較的シンプルで、実用的な表現も出てくる
この映画の魅力は「言葉の怖さ」を実感できるところ。シンプルな英語でも、使い方次第で強烈な印象を与えるという学びになります。