
2023年公開の映画『哀れなるものたち(Poor Things)』は、ヨルゴス・ランティモス監督によるダークファンタジー。エマ・ストーンが演じる主人公ベラ・バクスターの成長と自己発見を描いた作品で、ヴェネチア国際映画祭では金獅子賞を受賞しました。
物語は、科学者によって蘇ったベラが、まだ幼い心を持ちながらも世界を知りたいという欲望に突き動かされ、自由と冒険を求めて旅に出る姿を描きます。官能的で風刺的、そしてユーモラスという独特のトーンで、大人向けの寓話のような作品です。
“I must venture out to discover the world.”
作中でベラが語るこのセリフは、彼女の生き方を象徴しています。
直訳すると、「私は世界を発見するために冒険に出なければならない。」となります。
venture out は「思い切って外に出る」「冒険に踏み出す」というニュアンスを持つ表現。まだ何も知らないベラが、自分自身の欲望に正直になり、外の世界で経験を重ねようとする決意が込められています。
この言葉は、社会的な常識や制約から解放され、自分だけの生き方を探しに行く彼女の姿勢そのもの。観客に「あなたも自分の世界を探しに行けるか?」と問いかけているように響きます。
日本語字幕では「私は世界を知るために旅に出なくては」といった形で訳されます。
シンプルですが、「venture out」という言葉に含まれる“恐れを抱きながらも一歩踏み出す勇気”というニュアンスまでは表現しきれない部分があります。
だからこそ原文で聞くと、より強い意思と挑戦の響きが感じられるのです。
英語表現としてのワンポイントアドバイス
・venture out : 「危険や不安を伴いながらも外に踏み出す」という意味で、日常英会話でも「ちょっと冒険する」感じを出すのに便利。
例:I don’t usually cook, but today I’ll venture out and try a new recipe.
(普段料理しないけど、今日は思い切って新しいレシピに挑戦してみるよ。)
・discover the world は直訳すれば「世界を発見する」ですが、実際には「世界を知る」「外の世界を経験する」という比喩的な意味を持ちます。
まとめ
『哀れなるものたち』は独特の映像美と奇妙なユーモアで、人間の欲望や自由について深く考えさせる大人向けの作品です。
英語学習者の視点から見ると、この映画は 英語上級者向け。
理由は、
・文語的で少し古風な言い回しや難解な語彙が使われる場面が多い
・登場人物の会話が哲学的で抽象的なことが多く、直訳してもすぐ意味が掴みにくい
・セリフよりも映像や雰囲気で表現される部分が多いため、理解には高いリスニング力+背景知識が必要
その分「生きた哲学的な英語」を味わえる貴重な映画です。挑戦的ですが、観終わった後に残る余韻は格別。
もし少し背伸びして英語に触れたい方には、強くおすすめできる作品です。