映画『君の名前で僕を呼んで』名言に学ぶ英語表現

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2017年公開の映画『君の名前で僕を呼んで(Call Me by Your Name)』は、ルカ・グァダニーノ監督による青春ラブストーリー。主演はティモシー・シャラメとアーミー・ハマー。

舞台は1983年の北イタリア。17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)と、父親の研究助手としてやってきた24歳のオリヴァー(アーミー・ハマー)の、ひと夏の恋と成長を描きます。
アカデミー賞脚色賞を受賞した繊細で美しい脚本、イタリアの風景とクラシック音楽が織りなす雰囲気は、観る人の心に静かな余韻を残します。

この映画で英語学習をする面白さは、日常的な家族の会話や若者同士の軽いやりとりから、感情を込めた詩的な告白や哲学的な対話まで幅広い英語に触れられる点です。リスニング力を高めたい人にぴったりの作品です。この映画では、英語の他にイタリア語やフランス語も話せれており、エリオの知性や家族の文化的な雰囲気がよく表れていますが、やはりメインは英語が使用されています。

“Call me by your name, and I’ll call you by mine.”

映画を象徴する名セリフがこちら。

“Call me by your name, and I’ll call you by mine.”
(僕を君の名前で呼んで、僕も君を僕の名前で呼ぶよ。)

エリオとオリヴァーが互いの名前を交換するように呼び合うこの言葉は、2人の強烈な一体感と愛の象徴です。名前という「個の境界」を越えて相手と一体化する――その感覚がシンプルで美しい英語に表されています。
英語の by your name の響きには、どこか「あなたそのものを通して」というニュアンスが感じられ、より親密で官能的な響きを持ちます。字幕だけでは伝わりにくい繊細なニュアンスを、英語で聞くとより深く感じられるのがポイントです。

また、映画の終盤、エリオが失恋の痛みと向き合う中で、彼の父親がかけるスピーチも深い感動を与えます。

“We rip out so much of ourselves to be cured of things faster, that we go bankrupt by the age of thirty…”

(僕たちは辛さから早く回復しようとして、自分自身の一部をどんどん引き剥がしてしまう。その結果、30歳になる頃には心が破産してしまうんだ…)

この言葉は、エリオに「悲しみを無理に消そうとせず、感じ切ることの大切さ」を伝えています。
失恋や痛みを避けるのではなく、それを経験として受け止めることで人は豊かになる――という父の優しいメッセージです。
ここで重要なのは “rip out(引き裂く)” と “bankrupt(破産する)” の比喩。
英語では強いイメージを伴う単語で、心の痛みを経済的な「破産」にたとえることで、説得力と重みが増しています。

英語表現としてのワンポイントアドバイス

by your name
 ここでは「名前を使って」という意味。by は「〜を通して」というニュアンスを持ちます。
 例:Call me by my nickname.(あだ名で呼んで。)
rip out :「引き剥がす」「引き裂く」。感情的な痛みを強調する表現。
 例:He ripped out the page from the book.(彼はそのページを引きちぎった。)
be cured of … :「〜から癒される/治る」。ここでは「悲しみから回復する」という比喩的な意味。
go bankrupt :「破産する」。経済以外にも「感情的に空っぽになる」という比喩で使える。

*比喩表現は英語の魅力のひとつ。日常的な単語(rip, bankrupt など)を感情に当てはめると、豊かな表現ができます。

まとめ

『君の名前で僕を呼んで』は、繊細な感情を美しい映像と音楽で描いた青春映画の名作です。

英語学習者の視点から見ると 中級〜上級者向け
・会話自体は日常的で聞き取りやすい部分も多い
・ただし感情のこもった台詞や哲学的なモノローグは理解が難しい
・感情表現や親密な会話の自然なフレーズを学ぶのに最適

“Call me by your name, and I’ll call you by mine.” は、恋愛映画の中でも特に象徴的なセリフ。日常表現を超えた「言葉の詩的な力」を学べる一言です。

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