
2008年公開の『グラン・トリノ(Gran Torino)』は、クリント・イーストウッドが監督・主演を務めたヒューマンドラマ。朝鮮戦争の退役軍人ウォルトが、移民の隣人一家との確執や偏見を乗り越え、やがて心を通わせていく物語です。
タイトルの「グラン・トリノ」はフォード社の名車のこと。孤立した老人と移民の少年タオとの関係が、車をきっかけに変化していく姿を描き、暴力や差別という重いテーマを扱いながらも、人間の変化と再生を描いた感動作です。
英語はシンプルで口語的。ウォルトのぶっきらぼうな言葉遣いからは、短いフレーズに込められた強いニュアンスを学べます。
“Ever notice how you come across somebody once in a while you shouldn’t have messed with? That’s me.”
(時々、関わっちゃいけない奴に出会うことってあるだろ?それが俺だ。)
ウォルトの性格を端的に表すセリフ。「厄介な奴」と訳されがちですが、英語の直球さはより挑発的です。
・come across:「出会う」
・once in a while:「時々」=会話でよく使う。
・mess with:「関わる/ちょっかいを出す」
例:Don’t mess with me.(俺にちょっかい出すな。)
シンプルで挑発的な言葉が、彼の孤独と頑固さをよく示しています。
“The thing that haunts a man the most is what he isn’t proud of.”
(男を最も苦しめるのは、誇れない過去なんだ。)
ウォルトが語る人生観。
・haunt:「つきまとう」→「幽霊が出る」という意味もあります。
「幽霊のようにまとわりつく」ようなニュアンスが字幕よりも強く感じられます。
・isn’t proud of:「誇れない」
平易な英語ですが、過去の重さを深く突きつける一言です。
“You have the rest of your life to be a jerk. Why don’t you start now by not being one?”
(嫌な奴でいる時間はこれからいくらでもある。今はそうじゃない自分で始めろよ。)
ウォルトがタオに助言するときのセリフ。「嫌な奴になるのはいつでもできる」という皮肉に見えて、実は前向きな励まし。字幕より英語の方がユーモアが強く感じられます。
・jerk:「嫌な奴」
・Why don’t you …?:「〜したらどうだ?」(提案)→日常会話での柔らかい提案フレーズ。
厳しい言葉ですが、タオに「もっと良い人間になれ」と背中を押す温かさがあります。
まとめ
『グラン・トリノ』は、偏屈な老人が隣人との交流を通して変わっていく姿を描いた感動作。
・英語はシンプルだがニュアンスが深い
・厳しい言葉の中に温かさがあり、学習にも味わいがある
・英語学習者には 中級者以上向け(短いフレーズの背後の心理を読み取りたい人におすすめ)
“You have the rest of your life to be a jerk. Why don’t you start now by not being one?” のセリフは、ウォルトの不器用な優しさをよく表しています。